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歩くだけじゃない! 大人も子どもも満足な 欲張りファミリーハイク

おすすめポイント
  • 芦ノ湖を一望できるハイキング
  • ハイキングとBBQの組み合わせも可
  • 帰りは海賊船でショートクルーズ
この旅について

じつは箱根には無数のトレイル(登山道)がある。箱根火山の周囲を囲む外輪山の一部があるから当然と言えば当然。今回訪れたのは、意外と存在が知られていない極上のトレイル。歩くだけでは物足りない? 大丈夫。道中には大人も子供も飽きさせない、ちょっとしたサプライズも準備済みのようだ。

紹介する人

今回箱根を旅するのはライターとして、日本中を飛び回っている仁田ときこさんと、旦那さんの泰さん、長男の天くん、そして先ほどから先頭をぐんぐん歩いていく次男の禄くん。初詣は毎年箱根神社だし、家からのアクセスも良いから、箱根は家族にとっても馴染み深い場所だという。


箱根湯本駅に到着後、バスに乗り換えてまずは「箱根ビジターセンター」へと向かう。ここは、富士箱根伊豆国立公園内に位置する箱根エリアの情報収集ができる場所。ハイキングコースマップも充実しているので、ハイキングの際の立ち寄りスポットとしてもおすすめ。各種展示などは、子どもも大人も楽しめる工夫がつまっていて、なかでも中央にある箱根全山の巨大ジオラマは圧巻。

これから歩くことになるコースも一目瞭然なのだ。すでに天くんと禄くんの2人は夢中でボタンを押しまくり。ジオラマに仕込まれたコースをハイライト表示させている。


職員さんがすぐ外に生えている木を指さして、あの実は食べられるよと教えてくれる。

「すっぺー!」

おそるおそる2人が口にしたのはガマズミの実。教えてくれた職員さんはそんな2人の様子をみて、してやったりの笑顔だ。

「ガマズミの実の食べ頃は9〜10月。その頃には甘味も増して、美味しくなるよ」


箱根ビジターセンター内には巨大ジオラマが。付近には散策路もある。

ガマズミの実を食べた瞬間の天くん。ナイスリアクション。


「かっこいい建物!」と天くんが指差すのはハイキングスタートから10分ほど遊歩道を歩いた場所にある「芦ノ湖キャンプ村」のコテージたち。

実は帰りにここでサプライズがあるんだけど、とうぜんまだ内緒。そのままキャンプ場を抜けて、湖尻水門を渡ると登山口に辿り着く。


「熊出没注意って書いてある!」

箱根といえば温泉、というイメージが強い人も多いかも知れないけれど、アカギツネ、ニホンイタチ、ニホンリスなど多くの野生動物が暮らす場所でもある。とくにツキノワグマは箱根エリアでは戦前に絶滅したと考えられていたのが、2017年に再発見されたというエピソードもある。

この日は熊よけの鈴を持っていなかったので、みんなでパチパチと手を叩きながら歩く姿が微笑ましい。まあ、そんなことしなくても賑やかな家族の会話があるから、熊も事前に気付いてくれるとは思うけれど。


登山口からはなかなかの斜度の道を登っていくのだけど、天くん禄くんは登山道の中でもなぜか歩きにくい場所を選んで歩く。たぶんアスレチック感覚なのだろう。「そんなに急いで登ると後で疲れるよ〜」と息子たちをいさめつつ、同時にその成長も感じられて、ときこさんは嬉しそうな笑顔を見せる。


芦ノ湖キャンプ村を抜けたすぐのところにある湖尻水門の上を歩く。
両隣に壁のように生えているのはハコネダケ。箱根の山で多く見られる。

笹のトンネルを抜けると芦ノ湖が一望できるビューポイントに出る。


「わぁ〜」という歓声とともに天くんと禄くんが走り出す。登り始めて約30分。辿り着いたその場所は、一面に芝生が張られた開放的な空間。芦ノ湖展望公園だ。その名のとおり芦ノ湖を一望できる好立地で、樹林帯を抜けてきたいま、ものすごい開放感がある。子どもたちは元気がありあまっている様子で、登山の疲れなど微塵もないようだ。到着するなり公園の芝生で子熊のようにコロコロと転げ回っている。ときこさんと泰さんは、その隙(?)にコーヒーの準備をはじめる。2人もプロレスを一時休戦してお手伝いしながら、自家製コロッケパンを頬張る。寒くもなく暑くもないちょうど良い一日。ときおり吹き抜ける風が心地良い。


芝生が広がる芦ノ湖展望公園。その名の通り、芦ノ湖が一望でき、ベンチとテーブルもあるので、休憩場所にちょうど良い。



この日は禄くんがドリップ担当。鍋から直接だからちょっと苦戦中?

コーヒーブレイクを挟んだら、芦ノ湖を見下ろしながら気持ちの良い道をくだっていく。それにしても天くんも禄くんもすごい体力。

聞けば、裏山にトレイルがいくつもあって、そこを走り回って遊ぶ日々だとか。ただ、そんなワイルド系男子2人にとっても箱根の自然は新鮮らしく「熊でたらどうする?」なんて話ながら、楽しそうに歩いていく。


「あ、船がみえる!」


2人が声を揃えてはるか下の湖面を指差す。これが実はサプライズ要素その2。なので、親たちは顔を見合わせてにっこり。

「あっちに大涌谷も見えているよ」と泰さんが上手に注意をそちらに向ける。よく晴れた週末だというのに、本当に静かな山歩き。

ここまでで、すれ違った人はわずか数人だけ。知る人ぞ知る初心者向けの良トレイルなのだ。特に下りの眺望が抜群で、芦ノ湖、大涌谷、箱根スカイラインなど、箱根を象徴するさまざまなエリアを望みながらのんびりと下山していく。


下りは防火帯の中を歩いて行く。雨の直後などは滑りやすいので注意。



芦ノ湖湖畔をグルッとまわって、行きでも通りかかった芦ノ湖キャンプ村に戻ってきた。とりあえず子ども2人は、下山後のコーラで乾杯。「くぅ〜」なんて、ビール好きの大人みたいなリアクション。


そしてここでファーストサプライズ。ちょうどお昼時を狙って下山してきたのは、ここでBBQを満喫するのが目的だったのだ。メインの食材は予約すれば用意しておいてくれるので、荷物も最小限ですむからハイキングとの相性も良い。

泰さんが手際よく火を熾したら、天くん、禄くんがさっそくキャンピングフォークにマシュマロを刺してあぶりはじめる。鉄板の上では、肉たちがジュウジュウと美味しそうな音を立てている。食後は湖畔で石投げ大会。そこにあるもので自由に遊ぶ2人。


そこでふと気付いた。
イマドキの子どもたちなのに、今日一日「スマホが見たい」とか「ゲームがしたい」という言葉は一度もでてきていない。

下山後すぐにキャンプ場にある自販機で買ったコーラをグビリ。
持参したマシュマロをキャンピングフォークで焼く。王道だけど美味しい。
事前予約しておけば、食材なども準備しておいてくれるから手ぶらでもOK
キャンプ場脇の湖畔で石投げ大会。自然物だけで遊んでも十分に楽しいのだ。


湖畔でのんびりした後は、美しい広葉樹の森を抜けて「桃源台港」へと向かう。タイミング良く、ちょうど海賊船が岸に向かってきた。


海賊船でフィナーレ。これがこの日2つめのサプライズ。桃源台港から元箱根港まで、所要時間約40分と短いながらも箱根の景色を満喫できるショートクルーズ。

山に登って船で帰る。こんな場所ってなかなかない。特別船室の室内もとうぜん海賊船仕立て。大人気の海賊漫画にはあまり興味がないと言っていた2人だけど、やはりワクワク感は隠せない。デッキに上がれば、さきほど登った山々が見渡せる。

「あれに登ったんだよ」と泰さんが声をかけると、2人ともニンマリ。「けっこう、人間の足って遠くまで歩けるものなんだよね」と、ときこさん。

登山後に登った山を振り返ると、その達成感はひとしおなのだ。暖かい船内に戻ったとたん、禄くんはうとうと。その満足げな寝顔を見れば、このショートトリップを満喫してくれたのは一目瞭然だ。

1日たっぷり外で過ごした後、夕焼けに照らされた家族みんなの後ろ姿。「また来ようね」「来たいね」と、無言のうちに会話しているように見えた。


展望デッキからは気持ちの良い風に吹かれながら景色を満喫できる。







text:櫻井卓
photo:木本日菜乃

所要時間 6時間30

09:30
箱根湯本駅
START!
バスで35分〜45分
10:15
箱根ビジターセンター
15分
徒歩で15分
10:45
湖尻水門
5分
徒歩で40分
11:30
芦ノ湖展望公園
30分
徒歩で40分
12:40
湖尻峠
5分
徒歩で15分
13:00
深良水門
5分
徒歩で30分
13:35
FunSpace芦ノ湖キャンプ村レイクサイドヴィラ
60分
徒歩で15分
14:50
箱根海賊船 桃源台港
20分
船で約40分
16:00
箱根海賊船 元箱根港
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