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クライマックスは下山後!? 温泉&グルメを盛り込んだ ご褒美多めの明神ヶ岳登山

おすすめポイント
  • 登山初心者でもOK
  • 箱根を見下ろす高度感ある風景
  • 温泉&グルメも楽しめる
この旅について

箱根は登山ルートがたくさんある。そして街中の人混みとは裏腹に人気の少ない穴場的な場所も多い。今回は、アウトドア関連の仕事も多い、焚き火マイスターこと猪野正哉さんと、奥さまの睦さんがちょっとマイナーなルートで明神ヶ岳登山を楽しむ。だけじゃなく、下山後には箱根ならではのご褒美も待ち構えている様子。

紹介する人

朝9:22箱根湯本駅着のロマンスカーから降りてきた登山装備のふたり。猪野正哉さんと睦さん。服装からもわかる通り、今回、猪野夫妻が箱根を訪れた目的は登山だ。
駅を出てすぐのバス停から、箱根登山バスに乗り込み、宮城野バス停まで約30分。そこから徒歩20分ほどで明神ヶ岳の登山口に到着する。今回登る明神ヶ岳は眺望も良いため箱根でも人気の山。実は正哉さんにとって思い入れのある山なのだという。
「最初に登った山がこの明神ヶ岳なんです。そのときは、あいにく富士山は見えなかったんですが、だからこそ、また登りたくなった。登山を続けるきっかけになった山ですね」


宮城野バス停にはトイレもあり、近くにコンビニもあるので最終補給はこちらで。

明神ヶ岳へは、さまざまなルートからアクセスできるけれど、今回はあまりメジャーではない宮城野バス停からのピストンコース。これまでに3度明神ヶ岳に登っている正哉さんも初めてのルートだという。
夫婦でも一緒に登山に行くという2人。睦さんは久しぶりの登山にわくわくしている様子だ。
「普段はワタシのほうがよく歩くんですよ! 家にいるとき、この人ほとんどゴロゴロしてますから(笑)。体力的にはワタシのほうがあるはず!」
最初は樹林帯の中を抜けていく。睦さんの、跳ねるような賑やかな会話に、正哉さんが笑顔で答えながら楽しそうに登って行く。そんな2人を見ていると、山登りはコミュニケーションの場としても優秀なことに気付かされる。他愛ない会話。ちょっとしんどい時に見せるお互いの気遣い。山好きの間ではよく「恋人にするなら一緒に山に登れるかは大事」なんていうけれど、たしかに人生は山あり谷あり。キツイ時にも笑って一緒にいられるか、というのを測るバロメーターにもなるということか。
「明神ヶ岳は初心者を連れて行くのにちょうどいいんですよ。ある程度のキツさはありつつ、景色のご褒美もある。でも、こんなにキツかったかな。歳ですかね……」
とかなんとか正哉さんは言うけれど、さきほどから睦さんの様子をしっかり見極めながら、的確なペースで登っていく。
それにしても静かな山だ。この日は休日だというのに、登山道では誰にも会っていない。貸し切り状態の山を、睦さんの楽しそうな笑い声が彩る。

宮城野バス停から舗装路を20分ほど歩くと本格的な登山道に。

途中に何度か急登ポイントがある。あせらずゆっくり。


「あれ? なんだかほのかに温泉の匂いがしない!?」
歩き始めて1時間ほど。睦さんが気付く。
「そうそう、もうすぐ大涌谷が見えるはず」
「たまごのところだ!」
そこからさらに10分ほど歩くと尾根に出る。左手にはモクモクと煙をあげる大涌谷。このコース、ここからが良いのだ。ここまで上がってしまえば、頂上まではフラットな道が続く。眺望も文句なし。

「1時間ちょっと歩くだけでこんな景色が見られるなんて」
真横に大涌谷を見ながら睦さんが感動の声を上げる。
「なんだ、もう急登ないのか。残念だなぁ」
地図をチェックしていた正哉さんがニヤッと笑うけど、意外と本人も足に来てそうだ。
というわけで、景色の良いこのあたりで休憩を取ることに。

この日のおやつとして持ってきたのは、箱根にある人気店「ちもと」の和菓子たち。看板商品である「湯もち」をひとくち食べた睦さんが「なんじゃこりゃ〜!」とそのフワフワ食感に感動の声を上げる。
「登山のおやつには地元のものを持って行くことも多いです。その土地にあった味のものが多いですからね」と、猪野さんは鈴型のモナカ「八里」をパクリ。

両脇にハコネダケが群生しているエリアを進む。
1時間10分ほどで、大涌谷が見える鞍部にでる。
箱根湯本駅前にある和菓子屋さん「ちもと」の名物「湯もち」。9:00オープンなので、登山前に購入できる。

鈴の形をした「八里」。ほかにも「黒助」など登山に向くお菓子も多い。

その後も、左手に富士山、右手に湘南の海を眺めながら気持ちの良い尾根を歩いて行くと、あっという間に頂上へ到着。この日は残念ながら富士山は下の方がチラッと見えるだけだけど「これはこれで風情があって良い」と正哉さん。
「でもちょっと悔しい感じもあるねえ」
「ね、また来たくなる理由、分かったでしょ?」
「リベンジだ! でも、その前にごはんごはんっと」
2人がバックパックから取り出したのは、正哉さんの友人が開発中だという「マウンテン・グルメ・ラボ」という山飯だ。
「ものすごく自信満々で渡されたんだけど、そのお味は……」と正哉さんが言いながら、ぱくり。
「こ、これはヤバイ。家でも食べちゃうレベルだ……」
「ワタシが家で作るカレーより美味しいじゃないか……」
山で食べればなんでも美味い! というのは有名な話だけど、山頂のダイナミックな景色も手伝ってか、シェリー煮込みとグリーンカレーの2種類の味をシェアしながらあっという間に完食。

尾根に出てからは、箱根の町を見下ろしながら歩ける。

今回の富士山は中腹から上は雲の中。かなり近い距離で見ることができるから、それでも迫力は十分。
今回用意した昼食は「マウンテン・グルメ・ラボ」の試作品。まもなく発売予定。



登山は下山時のほうが要注意。疲れも溜まっているし、転倒もしやすい。実は登山中の怪我や事故は下山時に起こることが多いのだ。久しぶりの登山と言うこともあって、ちょっと疲れが見える睦さんに、正哉さんがさりげなくストックを渡す。
「登りの時はけっこう必死で足元とか周囲を見渡す余裕がなかったんですけど、下山はいろんな植物が目に入ってきて、楽しいです!」と睦さん。
まだ時刻はお昼すぎ。途中に咲いていたアセビや、杉林から差し込む木漏れ日などを楽しみながら、ゆっくりと来た道を下っていく。


取材時の3月下旬にちょうど見頃を迎えていたアセビ。


「今回の登山はここからがクライマックス!」
登山口まで下りてきた正哉さんが、いつになく鼻息荒く宣言する。2人がバスで向かったのは強羅駅。そう、箱根登山のご褒美と言えば温泉なのだ。
強羅駅からすぐの場所にある温泉施設「ゆとわ」で、さっぱりした後は、そこから坂を上がって今日の正哉さんの本命の目的地へと向かう……が、けっこうな激坂。
「今日イチつらい坂じゃないか……」
「背中おして〜!」
そうして辿り着いたのは「GORA BREWERY&GRILL」。ここはクラフトビールの醸造所が併設されたレストラン。とりあえず、外にある足湯につかりつつ、評判のクラフトビールをグビリ。
「生きてて良かったって、こういう時に言うべきなんだな」
「ぽかぽか足元と冷えたビールの組み合わせ。なんてシアワセなんでしょう」
「さっきの激坂も、ビールの味をより美味くしてくれてる感じあるね」
下山後のビール。公共機関を利用した登山だからこそできる技。箱根はいろんな登山口までのアクセスが良いから、マイカーでなくてもさまざまなルートを歩きやすいという特長もある。
ご褒美はまだまだ終わらない。目の前で豪快に調理されたラムチョップを頬張り、キューブ状のごはんをカリッと揚げた上にシーフードマヨが乗った「クリスピーライスシーフードマヨ」をつまむ。
そのお味もさることながら、エンタメ度が高い料理の数々に睦さんも大感激だ。
実はこのお店、世界的に有名な松久伸幸シェフと、俳優のロバート・デニーロが世界展開している「NOBU」レストランの系列店。建築も中村拓志氏という一流がつとめ、料理、空間とも極上な仕上がりだ。山から下りてきてすぐに、洗練された空間と料理を味えるというギャップが、非日常感をさらに煽ってくる。
「これまでは違うコースで明神ヶ岳に登っていたんですが、強羅を起点にすると、いろいろと立ち寄りどころがあって、楽しいですね。ご褒美多めは自分の登山スタイルにもピッタリです」
そういう正哉さんの横では、ちょっと放心状態的笑顔の睦さん。満足度は相当高かったようだ。


「GORA BREWERY&GRILL」は、赤い外壁と入口にある醸造タンクが目印。
4種類のクラフトビールを飲み比べられるテイスティングセットからスタート。
入口すぐの所に足湯があって、中で注文したビールを飲みながら浸かることができる。
店内にある巨木は、落雷で倒れてしまった箱根の杉を利用したもの。
メインは今回のラムチョップの他にポークステーキや和牛フィレステーキなども。2〜3人分とボリュームもたっぷり。
この日はメインのラムチョップの他に、季節野菜のグリークサラダ、クリスピーライスシーフードマヨ、トロサーモンのグリルをチョイス。他にも気になる料理がたくさん。

「このまま温泉宿に泊まっていきた〜い! さっき立ち寄った「ゆとわ」って泊まることもできるらしいよ」
今回のご褒美だらけの箱根登山に、すっかり魅了された睦さんが言う。
「それもありだなあ。そうすれば終電を気にせずに遅くまでここで飲める。どうやら隣には、もうちょっとカジュアルな系列店「PUB STOP」もあるらしいよ」猪野さんはさっきからそちらにも興味津々の様子だ。
古くから観光地として栄えてきた箱根だからこそできる、ストイックなだけで終わらない登山のスタイル。山と街の距離感が近い場所だとあらためて感じる今回の箱根登山だった。
帰りの電車の中では、2人はすでに次の計画で盛り上がっている。
「じゃ、次は登山&温泉泊、そして美術館巡り!」
「いや、美術館はそんなに……」
なにはともあれ、2人はまた箱根を訪れることになりそうだ。




text:櫻井卓
photo:木本日菜乃

所要時間 7時間40

09:30
箱根湯本(バス停)
START!
箱根登山バスで約15分
09:55
宮城野案内所前(バス)
0分
徒歩で約20分
10:15
明神ヶ岳登山口
0分
徒歩で約70分
11:25
明神ヶ岳山頂・昼食
60分
徒歩で80分
13:45
明神ヶ岳登山口
0分
徒歩で20分
14:05
宮城野案内所前(バス)
0分
箱根登山バスで約10分
14:15
強羅駅
0分
徒歩で5分
14:20
箱根ゆとわ
60分
徒歩で10分
15:30
GORA BREWERY & GRILL
90分
徒歩で10分
17:10
強羅駅
COMPLETE!
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